予兆

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ユースティアスの首都、エデン。 今や強大な軍事国家となった王国の首都であるエデンは、それにふさわしく町人で賑わう中を多くの軍人が歩いている。 シュミレーション訓練を終え城から出てきた軍服で剣を携える俺もその例外ではなく、軍人の一人として歩いている。 とはいえ、いくら軍人と言えども業務中でない人達はみんな町人であり、俺も食料が目一杯入ってる紙袋を抱えて帰路につく。袋から飛び出ているフランスパンが邪魔だ。 時刻は12時半。飲食店に活気が溢れるなか空腹に耐えながら足を早める。 俺が住んでいるのは城のすぐ近くにある集合住宅だ。俺の出身地は田舎も田舎で、軍人になるにも大体が地方所属になるのだが、俺の場合家族は全然戦争に巻き込まれ死んでしまいそこに残る必要もないのでどうせならとエデンまで来て現在は一人暮らしをしている。 この集合住宅に住んでいるのは全員軍人及び王宮の人間で、寮や社宅のような扱いになっている。そこには仲間も沢山住んでいて一人暮らしという実感が無い。 「おかえりー。どうだった?」 家の前で待っていて声をかけてきたのは、ユナ・メイリィ。同い年の17歳で階級は准尉の軍人だ。エデンに来てからの知人、友人はほとんどが軍所属の人間だ。階級は一つ下だが歳と入った時期が同じなので、彼女はその中でも恐らく一番仲がいい友人だ。 「んー、最初は良かったんだけど結局死んだよ」 聞かれたのはシュミレーション訓練の事だろう。思い出すと胸の辺りの痛みを一緒に思い出してしまう。 「あらら、何死んでんの。昇格して最初がそれ?」 「難易度が上がってたんだよ。腹減った」 抱えている袋を見せて空腹をうったえる。彼女の料理はとてつもなくうまい。俺が料理が苦手なのもあって、彼女の休日にはいつも料理を作ってもらっている。
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