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「…………」 無言で、私の視界に立つ 「お……お父さん!」 眉間にシワを寄せて、唇を結んで、これは怒っている表情。 だけど。 「瑠美」 「え?」 急に前を向いたお父さんに、首を傾げる。 「何してんだ、早くこい」 待ってるだろ。 と、付け加えて、お父さんが見上げる正面に私も視線を向けた。 「――!!!」 咄嗟に、口元を覆う。 覆った手先がジワジワと温かく湿っていく。 どうしてだろう……。 どうなっているんだろう。 私の涙で歪んだ視界には、 ステンドグラスの窓を背景に、タキシードを身に纏った ――――愛しい人。 「……さ、っ朔……さん」
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