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差し込む日の光で眩しい位に輝く朔さんは、優しい微笑みを浮かべている。 あんなに優しい微笑みは、今まで見た事がない。 正面を向いたまま、身動きが出来ずにいると 「瑠美、短い間だったけど、お前の側にいれて楽しかったよ」 そう言って、直人さんが近づいてくる。 「でも……」 「お前は、――アイツの元に戻るんだ。 みんな、ご家族も沢山の人がお前たちの事を ――認めてくれてるだろ」 私の言葉を遮って、直人さんは微笑み肩に手を置く。 「ほら、待ってるだろ」 「……あっ」 背中を少し強く押されて、私はお父さんの隣りへと一歩、踏み出した。 振り向くと、微かに直人さんの唇が動いた。 “幸せにな” そのまま、直人さんは会場から出て行った。
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