息がしたい。

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    「もう、ひどいな。」  彼女は、笑ってた。俺は、恐怖を確信した。身体は、堅くなり声は、震えていたかもしれない。それでも彼女は、周りに何も変化が起きてないように、俺の隣でいつもみたいに笑ってた。周りの音が、水の中にある泡みたいに消えて彼女の声だけが耳に伝わる。まるで――、二人だけみたいだ。他愛もない会話なのに一つ一つが耳の奥へこだまして次へ次へと流れる。これは、"日常"と、そう思わせてくれる。  日常と思うと次第に、恐怖を確信して強ばった身体が周囲を気にすることを許してた。騒がしい――。周囲の音が、聞こえて始めてから初めに思ったことだった。俺らのすぐ近くで人が、円を描いて集まってその真ん中に人がいた。誰だろう?自分の席から少し覗き込むと、そこに見覚えのある人がいた。――アカリだった。アカリは泣いていた。  俺は、そこでようやくさっきのことを思いだした。今、隣に座ってる彼女がアカリを椅子から押し退けたのを…。俺は、とりあえず椅子から立ち上がろうとした。オカシイ、立てない。痛みを手に感じて同時に、悪寒がした。彼女だった。
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