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お姉さま方が、私の回りに集まると私を逃がさないようにと取り囲んで、私に喋りかける。
「ひどい人よね、アカリさんって 貴女から彼を奪うんだもの.......。」
周りの女たちは、クスクス笑って話を進めていく。決して、気分のいいものではなかった。 彼が、まるでアカリのものとなり 私が、悲劇のヒロインかのような話で 、思わず『バカじゃないの』と、言ってしまいたくなるほど彼女たちの話は馬鹿げていた。でも、ここで彼女たちをむやみに逆撫でする必要はないわけで、むしろ味方になってもらおうと思った。
そのために、まずは彼女たちの話で傷ついたふりをしないといけなかった。
「あなたたちの話を聞いてとても驚いたわ。彼女がそんなひどい人だなんて...」
このさわりのことばだけで十分だった。後は彼女達が、勝手に妄想の中で話を進めてくれるから私はそれに合わせて泣けばいいだけだった。それから、今度は自分の価値を下げていかないといけなかった。
「でも、アカリさんを責めないで?彼は、優しいからアカリさんが弱ってると思っただけなのよ。それだけなのに、私ったら...アカリさんに妬きもちやいて、ごめんなさい。みんなの人なのにね。」
女子って生き物は、相手が自分を低めることを好む生き物だ。今回の場合は、相手を擁護しながら 自分が悪いとすることで あんたもわかってるじゃないという心理を彼女達に持たせる手法だ。これに対して彼女達は、 アカリにどんどんと不満を募らせていった。
そしてこの発言には、実はもうひとつ大切な目的がある。それは、もしも仮に彼女らが問題を起こしても一切関係ないと言う立場を作るものだった。アカリを許す発言があることで、私は彼女達の仲間じゃないと言い張ることができた。だって、彼に嫌われちゃうことを私はできないもの。
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