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「今日はマジですごい天気だよな。こんなの久し振りな気がする」
悠祐は閉じた傘を、犬がシャンプーしたあとのように、バサバサと水滴を振り払った。
「あー、私今日、早退しよっかなー」
眉をしかめてマリアが言った。見ればこめかみあたりを手で押さえている。
「どうしたんだよ?もしかして…頭痛か?」
「うん…なんかさ、昨日寝てるときだったかな。頭が痛くて途中で目が覚めたんだよね。今までこんなことなかったのにな」
悠祐は奇妙に感じた。昨晩、自分が感じた痛みを、別の人間も体感していたのだ。雨、頭痛、キーワードが揃い始めている。再びあのことが頭をよぎった。待て待て、考えすぎだ。いくらなんでも有り得ない。あれはただの噂だろう。
悠祐は疑念を拭えないまま、マリアと三階にある教室へと向かった。
一段一段階段を登る度に、ギシギシと軋む音が反響する。仮に泥棒が侵入したとしても、これだけの音が鳴れば、まず気付かないやつはいないだろう。まあ、ここに盗むようなものがあればの話だが。
教室のドアは前方と後方に、それぞれ一ヶ所ずつ設置されている。他のクラスというものがないため、ドアは開きっぱなしでも別段問題はない。ただ、一応は公私の区別として、ドアは閉めることを推奨されている。
後方ドアを開けると、もうほとんどの生徒が揃っていた。ただ、今日は少しいつもより騒々しい。
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