クラスゲーム

1

ひどく雨が降っている。
昨夜見た天気予報では降水確率は30パーセントだったが、絶対でないことは百も承知だ。
時折吹く強風が、雨を引き連れてリビングの窓に体当たりしていく。いつもなら、ひらけた視界を見せる唯一の景色が雨粒でいっぱいになっていた。
不意に電気ケトルのスイッチが切り替わる音がした。どうやらお湯が沸いたらしく、少し透けた部分から気泡の踊る姿を確認できる。黒地のTシャツにグレーの短パンという、ラフな格好の少年、野上悠祐は、それを手に取ると、予め用意してあった、インスタントコーヒーの粉末が入ったカップに、慣れた手つきで湯を注いだ。辺りに立ち込める香りが、どこかお洒落なカフェにでもいるような気持ちにさせる。
野上は一口それを啜るように飲むと、ふぅっと息を漏らした。
昨晩突如襲った頭痛の名残にまだ少し違和感はあったが、さほど気にならない程にまで緩和されていた。
頭を右の手の平でパンパンっと二回軽く叩くと、寝室に既に用意してあった、学校指定の半袖のカッターシャツに袖を通す。
背丈は175センチぐらいだろうか。世間的に見れば高すぎず、低すぎずといった甲乙つけがたい背丈だが、がっちりした肩幅が、それをカバーしている。顔立ちも中々整っている。将来、学生の時はモテたんじゃない？という質問を幾度となくされることだろう。
着替えを済ますと同時に何気なく壁時計に目をやった。もう家を出なければならない時間だ。