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蛇行する道を、鞄が濡れないように、腹部辺りに片手で覆うように隠しながら、せっせと舗装された道を登っていく。一度舗装された限りだろう、所々にひび割れがある。しかし、地元住民にとってこの程度のことなど当たり前なのだ。おそらく、外部からやってきた、言わば都会者は、これを見るなり地震の発生の可能性を示唆するだろう。もしくは足元が突然割れて深い闇にはまってしまう、なんていう馬鹿げたことも考えるかもしれない。 しかし、ここを通る他、どうにもできない理由がある。 何せこの道のみが、唯一山頂方面に繋がる道だからだ。車がすれ違うのもギリギリのこの道を通っていかなければ、学校はおろか、山頂を越えた先の少し栄えた町にも行くことができないのだ。 利用する人数は人口的な観点からみても多くはない為、こんなところに貴重な予算をまわすなんてことは地方自治体も考えやしないだろう。 後回しにされてきた結果が、この村の現状だ。高齢化が進み、成人を迎えた者はこの場所を去っていくのが当たり前になってしまった今では、いずれここは地図から抹消されてしまうのでは、という懸念さえある。 学校へ向かう途中、坂が少しなだらかになった辺りで、悠祐はふと思い出した。 そういえば担任の若菜好(わかな このみ)が、こんな雨の日には嫌な記憶が頭をよぎると、この前のホームルームで話していた。 キーワードのようなものも、幾つかあったような気がする。 あくまでも噂話なので、大して記憶に残ってはいないが、クラスの生徒たちは、気味が悪い、本当の話なんだろうか、と心底心配し、途端に騒がしくなったことはよく覚えている。
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