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「実をいうと、俺もこの生活に疑問を抱かない日はなかった。だが、これが、当たり前だと享受して抗うことを、いつの間にか忘れていた。これが、俺たちを衰退させた一番の原因なんだ」
「そうさ。容易に勝てないことは分かっている。だが、新しい未来を切り開く為には、先に挑むことも必要なのさ。結果はどうであれ、私たちはその先に命を託そうと思う」
「ああ。死んだ時は仲間に綺麗な墓でも作ってもらえば、それでいい」
彼と友の考えはまとまった。未来を切り開く為に、地上を支配する奴らに反抗を試みるのだ。
しかし、奴らに考えも無しに向かっていくほど、彼らは馬鹿ではない。そこで、死んでしまえば、もとのこもない。反抗の手順は念入りに練られた。どこを、どのように行動すれば、奴らに一撃を与えられるか。どうすれば、倒せるか。彼らは自分たちのもてる力と知識を持ち寄って、戦う準備を整え続けた。
初めは、たった二人だけだった反抗を志した者。周囲はやめた方がいいと、止めに入るが彼らは相手にしなかった。覚悟を決めた者を止める手段などない。
そんな彼らの強い意志に惹かれ、賛同する者も現れた。
誰かがキッカケを作れば、必ず、それに賛成してくれる人は現れる。誰もがキッカケを望んでいた。
しかし、地上を支配する奴らも馬鹿ではなかった。そのような反抗を企てている者たちを見逃すことはなかった。
奴らは自分の手を汚すことは拒んでいた。手を汚さずに、彼らを殺す手段を常に考え続けていた。そして、行き着いた手段というのが、最悪の兵器である毒ガスだ。
「しまった。感づかれた!」
路地裏で計画を練っていた彼らに向けて、奴らは毒ガスを撒いてきた。逃げようにも、毒ガスは強力だ。一呼吸しただけで、身体中の神経を麻痺させて、自由を奪う。それから、ゆっくりと身体の害になる毒を吸わせるのだ。
毒ガスだけには、誰にも抗うことはできない。
自慢の羽根で空を飛ぶこともできない。手足をばたつかせ、藻掻き苦しむことしかできない。
「ち、畜生」
こうして、一時の反抗の意思は毒ガス一つで封じられ殲滅された。
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