Scene.01:minor touch

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夕暮れ。 日は沈みかけて、空は赤い。 いや、赤と紺のコントラスト。 もう夜が来る。 あの後、 鍵を開けて中を見てみるように頼んだけれど 当たり前のように鍵は開けてはもらえなかったし、 奢りのはずだったご飯も無しになったし 結局ふたりが見たものは幻、幻覚、 またはそれに近いもの。 言わば〈ファンタジー〉扱いになった。 あんなまがまがしいものが 幻想とはとても思わないけど。 本来あるわけがない人の往来が プール裏であった。 それを見たはずであった門屋は 最終的にそれも幽霊だったのかな、 と、そう決めつけた。 そう決めつけた方が、楽だから。 それにもし、二人が見たものが死体ならば わざわざこんな高校の、 それもわざわざプール裏に隠さなくてもいいのにと考えることが出来るし 行方不明などで事件になっていてもおかしくない。 実際、事件になってないし。 気のせいでは済まされないけど、 気のせいだったのだろうか。 いや、でもなあ、と 考える事が嫌になった雄太は 一人、家で貯めていた宿題に嫌々手をつけた。 ある6月の日。 もうすぐ夏が来る。 そんな時期に起こった出来事。 これが、始まり。
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