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雨、過ぎ去った後。
道路には水溜まりが出来ていて
それに反射する彼女の髪の毛には寝癖が映っていた。
「まっにあわーん!」
いつもの高校の通学路から少しそれた道を走る。
いわゆる、近道。
通学路のアスファルトには出来にくい水溜まりも
近道は残念ながら細い砂利道なので
水溜まりにとって好都合の条件。
はじけ散る泥水は靴や鞄にひそかに散っていた。
携帯を見る。
8時と25分。
あと5分で門は閉まる。
距離的には5分もあれば間に合う距離。
「あーぁあ!もぅ!」
細い砂利道を駆け抜け
いつもの通学路へ出る。
全力で走る。
信号も誰も見ていなければ
赤信号でも〈気を付けて渡れ〉だ。
その時だった。
「ちょちょちょ、えーっ!?」
ない!
携帯がない!
右の内ポケットに入れていた携帯がない!
「最悪」
その後もちろん彼女が学校に遅刻したのは
言うまでもないこと。
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