Scene.01:minor touch

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「お前らなー、先生はお前らと違って 忙しいんやっちゅーねん」 眉間にシワを寄せた先生は こんなことに付き合ってられるかと、 そんな顔をしながら言った。 「よく考えたらこのプールなんかもう何年も使ってないしな 用具入れ全部鍵かけとるわ あほやなー俺も」 確かにこのプールは 雄太ら二人が入学したとき既に使われている風な様子もなかった。 それに水すらなくて ただ無駄にある施設になっていた。 いや、でも確かにこの〈用具入れ4〉だけは 鍵がかかっていなかった。 それに絶対この中に死体……いや、死体でなくても 何かがいた。 いたはずなのに、なんで? 門屋もちゃんと吐いた。 少し日本語がおかしいけど でも確かに吐いた。 そう、雄太が今立っている少し横で 手をパーにしてこっちに向けながら。 「先生!」 「なんやねんもう。 鍵かかっとるやんもう。 お前らの嘘はおもろいおもろい 帰ってかまんか?」 二人の必死の問いかけにも応せず 先生は仕事があるから、と それだけ言い残して去っていった。 あと『きぃつけてな』とだけ言って。 「なあ」 門屋が訊く。 「お前何見た?」 「死体っぽいもの」 「俺も」
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