壱の巻

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「朝霧(あさぎり)、明日から屋敷に出向かい、桜(さくら)姫様の下に仕えなさい」 夕刻お父様に呼ばれ、何かと思えばやはり良い話では無かった。 世は戦国時代。 あたしは朝霧。 あたしが生まれた所は、庶民の家で決して裕福では無かった。 でもあたしはお父様とお母様と暮らせればそれで良かった。 夕霧(ゆうぎり)という妹が生まれてからは、もっと幸せだった。 こんな生活が続くのなら、お金など要らない。 そう思っていた。 ……先程迄は。
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