壱の巻

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縋る思いでお父様の後ろに居るお母様を見ると、お母様は苦しそうに目を瞑って、何も言う気配は無い。 「わ……かりました……」 所詮、庶民は断りなど出来ない。 朝霧十七歳、桜姫の下に仕える事になった。 「宜しい」 「ちょっと待って!…あたしも行く!」 夕霧がいきなりそう言い出した。 「! な、何を言っているの!」 「そうだ夕霧!お前は何も言われていない!此処に居て良いのだぞ!?」 ズキッ お父様の言葉に胸が痛んだ。 『お前は何も言われていない』 『此処に居て良いのだぞ』
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