0章 黄昏の空 冬の泉

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 男はつい昨日の出来事のような悪夢を見ていた。 日本と呼ばれる国に暮らしていた男の世界は瞬く間に滅ぶ。 断片的に蘇る悪夢は男を苦しめた。 凍える大地にて  飢えに苦しむ人々の叫びがこだまする。 巨木が燃えて  大地に倒れると火は人々を呑み込んだ。 海は荒立ち  津波が大陸を呑み込んでしまう。 脅威は自然だけではなかった 空を切り裂く大きな鷲(ワシ)が大切な人の魂をも呑み込んでいく 「こっちに下りてこいよ化け物が.....」 男は力尽きうずくまった、傷ついた体はいう事をきかない。 「......何匹いんだよ。こいつらは」 辺りは無数の屍とそれを食べる蒼い生き物が這いずりまわっている。 最後に大きな揺れと共に大地が砕けると、地面から黒い煙が上がった。  そこから飛び出したひと際巨大な黒い蛇は、男を呑み込むと深い闇へと沈んでいく 「いったいどこへ連れてく気だよ」 ー黄昏の世界から、お前を連れ出してやるー ー天使にも見捨てられ、終末を生きる人間よー ー願わくは、その生涯を世界の......へ捧げよー そうして誰かの言葉が脳裏に響くと、男は意識を手放した。 「ああ、最悪の気分だよ。」
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