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釈然としない気持ちのせいで、その後は眠れなかった。
いまはゆっくり休みなさいと、ローディアさんは言葉を残して出ていった。
妖精はそんな俺の気持ちを知ってか知らずか、グルグルと飛び回り質問をしてくる。
「寝るの?ねぇそれってどんな気持ち?人間ってどんな夢をみているの?」
本当にデリカシーのない妖精だ。
正直そっとしておいてほしいものだが、この妖精は満足するまで延々と飛び回るのだろう。
「妖精さんは、なんて名前なんだ?」
俺は逆に質問をしてみた、思えばこの妖精の名前を知らないからだ。
すると、妖精はよほど嬉しいのか上下に飛び跳ねて言った。
「あたしの名前!?なにがいいかな、ナビィ、ルック、チャット、トレイル?お好きに呼んで、むしろ名付けて!?」
いま聞き逃してならない単語が出たと思ったが流す事にした。
「名前がないのか、じゃあウィキってのはどうだ?」
世界の知識を集約する某オンライン百科事典の名前からとった、可愛らしいしこれから色々とお世話になるであろうからピッタリの名前だ。
すると妖精ウィキは俺に飛びついてくる。
顔目がけて飛んできたのて、思わず右手で受け止めたが不思議なことに温かく磁力でも働いているような反発感があった。
「素敵な名前ね、ウィキ!あたしはウィキよ。よろしくエイジ。」
手にすり寄ってきてなんて可愛い妖精さんとは言わないし思えない。
「ああ、よろしくね。」と言葉を返すもこのテンションの高さには正直参っている。
それからウィキに様々な質問をした。
しかし大半の事を「知らない。」と返され俺はがっかりする。
それもそのはず妖精には世界の事柄など興味はない、目の前のことにしか注目しないようなのだ。
唯一詳しく聞けたのは、ローディアさんや身の回りの事。
驚いたことに彼女は80歳を超える御婆さんだった。
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