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それから俺は疲れてしまい、頭で船を漕いでいた。
コクコクと首が落ちると慌てて目を覚ます。
するとそこに妖精の姿はなく、どこかへ飛んで行ったのか俺はまた眠気に身を任せて眠った。
「朝だよっ!起きるの、人間は朝から活動するのよ。じゃないと豚になっちゃうの、食べられちゃうの。」
そんな煩いウィキの声で目を覚ます。
窓の外は雪が降り積もっているが、部屋の中は暖炉のお蔭で寒くはなかった。
そういえば服が変わっている、温かな丈夫な生地でそんなことに気づく余裕はなかった。
すると扉が開きローディアさんが現れた。
とても御婆ちゃんとは思えない若々しい容姿だが、しゃがれた声と老眼鏡だったのだろう衰えた身体がそれを物語っていた。
「おはよう、お目覚めなのエイジさん。随分とこの子(妖精)に好かれているようね。」
ローディアさんはそう言うと、食べ物を持って訪れた。
パンにスープはなんとか食べられそうで、忘れていた空腹を思い出す。
「お腹がすいたでしょう?朝食よ、ゆっくり食べて下さいね。」
俺は感謝の言葉を返し、それを受け取った。
ライ麦のようなパンは香ばしくて、そのままでは固いからスープに浸して柔らかくする。
スープは野菜と薬草のような匂いが少し混ざっているが、自然と食欲をそそるいい香りだった。
それを食べ終わり、またお礼を返す。
「ローディアさん、美味しい食事をありがとうございます。それに助けてもらいなんとお礼を返せばいいのか....」
ローディアさんは「いまは何も考えずに体を休めなさい。」と言ってくれる。
だが、そうはいかない。
目が覚めてから、異常な俺の体は既に十分動き出すだけの回復をしていた。
あれだけ傷だらけだったのに、たったの一晩でこの姿である。
体の内側に化け物じみた異変が巣食っているのだ。
不気味な蒼い生き物がいまも蠢いているのを感じて
俺は自らの腕に、スプーンを突き立てた。
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