からころむ(過去編)

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―――――――――――― 我は、落ちている。 今、踏み出した崖の上から、落ちている。 人間が一番簡単に無になれる方法を、我は執った。 落下と共に、次第薄れ行く意識の中。 我の脳裏には姉の顔が浮かんでいたとおもう。 これで姉はあの家を追い出されずにすむ。 我の命など安いものだ。 これで、あの姉は、我のことなど気にせず幸せに――――― 『なれると思うか。』 突如として目の前に現れた、 民族衣装を身にまとった『もの』。 気がつけば、落下は止まり。 上も下もわからない空間に、我はいた。
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