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毛利の地を奪い、何日か後。石田三成は手負いの木代大和を抱きながら、大阪に帰ってきた。
「三成!帰ってきたんだな!!」
「家康…」
大阪城の門で、徳川家康が二人の帰りを待っていた。馬に乗っている三成の姿を見て、駆け寄ってくる。
「…やま、と?」
「…」
「どうし、たんだ。大和…」
三成の腕の中で顔を白くして眠っている彼を見て、家康は狼狽える。
「…疲れたな。さあ、早く部屋に連れて行こう!」
「…何故だッ!家康!!何故私を責めない!?」
「三成…」
「家康!私は!こいつを…ッ」
同じく彼を想う家康なら、自分を責めてくれると思ったのに、家康は責めてくれはしなかった。ただ、苦笑して…三成の罪を、許す事を選んだ。
「お前も傷ついたのだろう?きっと、ワシでも同じだったさ…」
「違う!違う…!!私の判断が、大和の布陣を乱したのだ!私は…!」
「何をしているんだい?二人とも…」
門前で話をする二人の所にやって来たのは、竹中半兵衛。彼は三成に近付くと、大和の顔を覗き込み、頭を一度だけ撫でた。
「…今回も、豊臣軍には死者は無かったと聞いたよ。よく頑張ったね、二人とも」
「半兵衛様ッ!それはッ」
「早く大和君を休ませてあげよう。それが一番だよ」
半兵衛も三成を責めずに、立ち去り医者の手配などを行いに行ってしまった。…三成に残されたのは、大和を部屋に運ぶという役割だけの様だった。
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