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「三成…?大和だけど」
トントンと襖をノック。余り音はしないけど、三成には聞こえる筈だ。
「…入っても、いいかな?」
そこまで言うと、襖が少しだけ開いた。どうやらOKということらしいね。
「…三成。えーっと、おはようかな?」
「…」
三成は部屋の隅でお山座りをしている、可哀想に。
「まだ傷は治ってないね。…ごめんね」
三成の顔には、小さな傷がいくつかあった。他の体の部位は装備のせいで見えないけど、いくつも傷があるだろう。…俺のせいで。
「ぜ…」
「ん?」
「何故、私に謝る!」
三成が立ち上がったと思うと、俺の肩を掴まれた。あいてて、結構な力である。
「先の戦で、貴様が怪我をしたのは私の判断のせいだッなのに何故…!何故、誰も責めてはくれないッ!!」
「三成…俺は、三成のせいだなんて思ってないよ。…むしろ、俺のせいで三成が傷ついて…申し訳ないと、思ってる」
俺が不甲斐ないせいで、三成が暴行を受けた、それは揺るぎないのに…どうして、三成がそんなに気にしてるんだろう。
「違うッ!貴様は読みが外れてから、一度引く算段を建てたのだ!それを私が拒否した為、貴様があの選択をしなければならなかった!!」
「三成…あれは俺が、」
「私のせいで、貴様がッ!…大和が、傷付いた」
三成の悲しそうな表情が、俺を見つめた。そして我に帰り、手を離してまたお山座りに戻る。
「三成?…俺は大丈夫だよ、もう痛くもないし。銃を撃ったのは、…三成が傷付くのを、見たく無かったからだよ」
「…」
「俺は、三成が傷付くのは嫌なんだ。でも、三成もそう思ってくれてるなんて…考えもしなかった」
三成がチラ、とこちらを見た。…ほんと小動物みたいだなぁ。
「違う、私が…」
「うん、三成も悪いのかもしれない。でも、俺も悪いよ」
俺も、自分を責めた。でもそれじゃいけないんだと、三成が気付かせてくれたから。
「それで、終わりにしよ?ほら、お土産も買って来れなかったしさ。お茶菓子でも買いに行こうよ?それで皆で、お茶会…」
「大和…?」
「ッ…!だいじょ、ぶだよ」
鎮静剤でも切れたのか、忘れていたあの日の激痛が戻って来て、俺は膝をついた。
「大和!!…無理をして…部屋に戻るぞ」
「てて…ごめん、ね」
俺はこうして、部屋に戻ることになった。
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