一陣、豊臣

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「半兵衛様、なんの用事だろうね?」 「さてな、あの方の考える事はいまいちよく分からないんだ」 先程呼び出されたので半兵衛の蚊帳に向かう。何でわざわざ俺と家康なんだろう? 「半兵衛様ー、来ましたー」 「入っていいよ」 蚊帳につくと、半兵衛からの許可が降りたので入る。 「よく来てくれたね、二人共」 「遅くなって申し訳ない」 「別に構わないよ」 半兵衛の顔には相変わらず笑顔が張り付いている。ほんと、何考えてるのか分からないなぁ。 「次の任務は君達にぴったりなんだ。引き受けてくれるよね?」 「…まずは内容を聞かせていただきたいのだが」 「あぁ、そうだね」 半兵衛は頷きながら、棚から一枚の紙を取り出した。そしてそれを机の上に広げる。どうやら日本地図の様だった。 「君達に向かって欲しいのはここ…四国だよ」 「四国…まさか」 「そう、長曽我部君だよ」 家康の表情が強張った。そっか、友達だもんね。…友達であるアニキを討てと言うんだろうか? 「そんなに怖い顔をしないで、家康君。君達には、彼に降伏するよう宣告してきて欲しいんだ」 「…元親が降伏なんて」 「そこは君達の腕の見せ所だよ」 半兵衛の顔は変わらない。それが断る事を許してくれないことは、家康はよく知っている。 「頼んだよ、二人共」 俺達の答えなんか聞かずに、半兵衛は日本地図を片付けた。
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