ある日、ある時、ある場所で

2/32
前へ
/69ページ
次へ
その日は、快晴だった。 空には、雲ひとつなく真っ青な青が広がる。 夏間近な空気が漂い、昼すぎではあるが、まだ、高くのぼった太陽がジリジリとコンクリートを焦がす。 屋外には人々の姿はほとんど無く、人通りの多い場所ですら、外気の暑さから逃れようと、ある人は足早に建物に避難し、また、ある人は木陰のベンチに座って汗を拭き、元気なちびっ子達は、半袖半ズボンのちょっと早い夏真っ盛りな服装で、はしゃいでいる。 そんな夏間近な昼下がりの平日、ごくふつうの日だった。 「やっぱり、暑いな、今日は」 見上げた太陽が眩しくて、手をかざし、目を細めた。 手の指と指の間からこぼれる光にさらに目を細める。 何故手をかざしたのか何故、太陽を見上げたのか、自分でも良くわからなかった。 わざわざ立ち止まったのかも。 横にいる友人の声がぼんやりと響いてくる。 その時、いきなり影がさしたのだった。 影がさしたといっても、不吉なことが起こったとかの文法的なものではない。 事実上、影が覆ったのだ。太陽が照らしているはずの街は、一時、薄暗い闇に包まれた。 「なに、あれ?」 呆然とした顏で隣にいた友人は、上を見上げた。 僕は細めていた目を見開いた。 一言 「わからないけど…」 一度きってもう一言 「やばいやつかも。」
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加