元カレ

2/7
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
親の仕事の都合で高校に入って一年も経たずに、慣れ親しんだ大阪の地を離れて東京で暮らすことになった私は、卒業を期に大阪に戻って一人暮らしを始めると決めていた。 あまり友達には知られていないけれど、実は私には四個上の兄が居て兄は私が中学に入って間も無く家を飛び出していて唯一わかるのが、大阪に住んでいるということだったからだ。 章大と出会ったのは、そんな18の冬。 一人暮らしする為の物件を、冬休みを使って探していたある日。 地下鉄へ続く駅前の階段、その近くの植木に腰掛けギターを弾く彼の姿を見つけた。 お洒落で女の子みたいに可愛い容姿とは裏腹に、力強く弾かれるギターの音色、高い訳でも低い訳でもない、でも安心していつまでも聞いていたくなるような歌声だった。 そのまま彼から目が離せなくなり私は目の前で歌う彼を、ずっと見つめていた。 そして気付いた時には夕日は沈み、辺りは暗くなってしまっていた。 (ヤバッ…周り真っ暗だし!早く帰らなきゃ…) 『なぁ、君、名前なんていうん?』 「へ?」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!