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その時見た嬉しそうな章大の笑顔を、抱き締めてくれた温もりを、時間が経った今でもはっきりと思い出す。
『懐かしいこと、思い出しちゃったなー』
私は潜り込んだベッドから、再度眠るのを諦めて起き上がる。
そして壁に飾られた大きなコルクボードへと視線を向け、困ったように笑みを零した。
そこには章大と過ごした二年間の写真が、別れた今も沢山張りつけられたまま存在している。
喧嘩もしたけど、多分今まで生きてきて私が一番幸せだった時間。
初めて、本気で人を愛して愛された。
いまでも色褪せることなく輝いてる、宝物だ。
『…自分で決めた事なのに。未練たらたらじゃん、私』
視線を逸らし自嘲するように笑って、私はカーテンを開けた。
空には眩しい程の太陽がのぼっている。
『よし!こーなったら大倉叩き起こして、昼ご飯奢らせよ』
かなり言い掛かりに近い八つ当たりを決めた私がリビングへ向かうと、タイミングが良かったのか悪かったのか。
すっかり忘れていた悩みの種が、インターホンを鳴らしやってきたのだった。
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