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元カレ
「なぁ、転んだ時叱咤してでも助け起こしてくれるんが友達で、一緒に倒れ込んでくれるんが、恋人なんやって」
『へぇ~。…じゃあ、章大は私と一緒に倒れ込んでくれるの?』
「もちろんやん!ほんで、その後は二人で一緒に立ち上がろな?」
『うん』
懐かしい、夢を見た。
瞼をうっすら開くと、窓の隙間から寝室へと差し込む朝日が眩しい。
私は唸りながら布団を被りなおすと、枕元へ置いた携帯を手探りで掴んだ。
重たい瞼と格闘しながらも時刻を確認すればまだ朝の七時で、休みだというのに早起きした自分を呪った。
…ああ。
自分、というのは少し語弊があるかもしれない。
きっとこんな夢を見たのは、大倉から昨日章大の名前を聞いたからだ。
安田章大。
今まで付き合った恋人の中で一番長く続いた、最長記録保持者だったりする。
私は未だに携帯のデータフォルダに残る、二人で撮った画像を見つめて瞼を閉じた。
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