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俺はこの自分の顔が、あまり好きではなかった。
要するに、イケメン。
いや、自惚れではなく、ただの自覚。
中学時代はよく遠巻きに見られたり、女にまとわりつかれたり、告白されたり・・・
僻んだ男共に絡まれて喧嘩になったり、友達が友達じゃなくなったり・・・
要するにこの顔のせいで、しなくていい苦労をしたわけだ。
まぁ良い事もあったが。
近所のおばちゃんがお菓子くれたり、店では値引きしてくれたりオマケくれたり。
だが今思い浮かぶのは、面倒くさかった事やムカついた事。
「・・・ぷはっ」
顔を無造作に水でバシャバシャ荒い、思い切り振り上げ鏡を再度見る。
しばらく睨み、大きく溜め息。
「初日から何やってんだか・・・」
今更変更の利かない顔なんぞ見て不機嫌になってる場合ではない。
早くしないと遅刻してしまう。
顔を拭き、軽く髪を整えてから台所へ向かい、ケトルをセットしてトースターにパンを差し込む。
トーストが出来上がるまでに制服に着替え、終わる頃に丁度トーストも焼きあがった。
コーヒーを煎れ、パンをかじりながら忘れ物はないかチェック。
まぁ、今日は入学式とHRのみだから、必要なものなど貴重品と生徒手帳、筆記用具位なものだが。
とりあえず朝食と用意も終わり、時計を見ると8時5分前。
入学式は8時半からだから、まだ少し早いけど・・・
「まぁ、いいか」
寮とはいえ初めての敷地だし、探索がてら早めに行くかと、俺は鞄を片手に部屋を後にした。
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