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コンクールが、金管八重奏だから、木管楽器の雪音ちゃんとは、ここでお別れ。 別室で練習だ。 木管は木管で、コンクールが近い。 私は小さな部屋の、防音のドアを開けた。 いわば発声練習のような、指の準備体操のような。 低い音から高い音。 トランペット。 トロンボーンとバストロンボーン。 ホルンと、チューバ。 様々な音色の、低音域から高音域。 その中でも、遼の奏でる音域は、遼の容姿のように、なめらかで。 真っ直ぐに。 金色の、曲線の綺麗な楽器を構える遼と、その腕と指の角度。 「………腹立つッ!!!」 男の癖に!! なに、そのしなやかな曲線! 楽器と一体化したような、シルエット。 金色の楽器に映える、黒い髪。 羨ましいったらありゃしない。 私は今日、黒く染め直そうと思っていた髪を、いじれないままだった。 哲が荷物を持ってくれるって言うもんだから、つい食材の買い出しに行ってしまった。 遼の黒髪が羨ましいから。 哲に買って貰った、ピスタチオの乗ったチョコレートケーキを帰ったらすぐ、食べてやる。 哲の分まで、食べてやる!
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