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今朝から、私の様子はおかしかったのかも知れない。 なんたって、起こされる前に起きていたのだから。 鳥にリンゴを出して、カーテン越しに、ヒヨドリを眺めていた私を見たときの哲が、思い切り眉をひそめたのが、すごく面白かった。 哲が、旋盤を止めた。 ひとつ、音が消える。 「蜜、具合…悪いのか?」 傍まで来た哲が、MAX怪訝、といった顔で、私を覗き込んだ。 やめてやめて。 なんだかすごく悲しくなってきた。 今夜、雪音ちゃんと映画に行く。 そうしたらきっと、哲は。 「大丈夫。元気だよ?」 「………今日、延期したら?」 うわ、聞いてない。 大丈夫だって言ってるのに。 「…大丈夫だって。…楽しみだね?」 …ダメだ、私、笑えてない。 楽しみ、じゃないんだもん。 雪音ちゃんには悪いけど、哲ひとりで行って貰おうかな…。 こんな、笑えないなんて、思わなかった。
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