…8

2/17
835人が本棚に入れています
本棚に追加
/354ページ
有り得ないモーニングコールに、いまだかつて経験したことの無いような素早い目覚め。 こんな勢いで血圧上がったら、ほんとに死んじゃうじゃないか、と、胸を撫でた。 ベランダで待つヒヨドリに、リンゴを出す時に感じた、締め付けられるような苦しさは、後悔というよりも、未練だと思った。 明日の練習には、行けない。 次も、行かない。 その次も。 哲も心配だし、何より、遼と顔を合わせられない。 遼だって、気まずいに決まってる。 「みちゅさ……蜜」 ああ、婿様。 諦めるの早くなりましたね。 「ずいぶんと素直に寂しそうな顔してるじゃないか?」 「…え?」 そんなに、しょげてた? 「このままの仕事量なら午後、手が空くだろうから、ちょっと哲のとこ、行ってきてくれるかな」 「………えぇ~」 寂しそうになんか、してないもん。 どっちかっていうと…哲ではなく…遼のせいだし。 何となく、哲の顔も見たくないような、見たらいけないような。 そんな気も、するし。
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!