…2

15/20
前へ
/354ページ
次へ
「これから洗濯する。哲のもする?」 沈黙…いーち、にー… 三秒見つめ合ってから、哲は頷いた。 一体何を思案した三秒だろう。 見つめ合う三秒って、意外と長い。 「じゃあ…俺風呂掃除してやるわ」 ああ、自分は何をしようか思案したのかな? 「あ、お風呂の洗剤ないよ」 「まだ買ってないのか」 「私、シャンプーで洗ってた」 えへ、とわざとらしく笑えば、哲はいつも苦笑する。 この顔、嫌いじゃない。 嫌いじゃないけど、ちょっと子供扱いされている気がする。 哲の唇のピアスが、たまに非現実的にキラキラと。 ふいに思い出した、昨夜のギタリストの唇の感触に、ざわりと、血の気が引いた。 丸い、ローズマリーのパンは、哲が三つ、私が一つ。 哲は、よく食べてくれるから、少し嬉しい。 また、作ろう。
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

833人が本棚に入れています
本棚に追加