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「ところがオレが忘れて来ちゃいまして」 「えぇ?」 遼が照れたように笑う。 トロンボーンを片手に、黒くて細い髪を掻き上げて。 「来週、また練習の時に持ってくるよ」 よく覚えてはいないけど、きっと私のだ。 愛用マッピはトランペットと一緒にケースに入れたけど、予備はジャケットのポケットに入れていたかも知れない。 いや、そんな事より。 「遼、どうして今日は眼鏡ないの?」 遼ほど眼鏡の似合う男はいないんじゃないかってくらいなのに、今日はしていない。 残念だ。 遼の眼鏡と、団長の髭が楽しみで毎週来てるのに。 「今日はコンタクト入れてみたんだけど…」 可笑しいかな?と眉を下げる遼の身長は、だいぶ高い。 インテリな雰囲気すらある遼が、そのトレードマークの眼鏡をしていないなんて。 唇にピアスのない哲みたいで、なんだか味気ない。
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