835人が本棚に入れています
本棚に追加
/354ページ
14日の、木曜日。
と、雪音ちゃんと決めた日を、メモ代わりにメールした。
よく考えたら、わざわざメールなんかしなくても、帰ったら言えば良いんだった。
哲は雪音ちゃんを好きだ。
雪音ちゃんは、哲を好いてくれるだろうか。
カッコいいですよねぇ、だけじゃ、駄目だと思う。
だけど、もしかしたら。
トランペットのハイツェーの高音域を必死に吹き上げ、くらくらした頭で、ふと思う。
私がいたら、駄目なんじゃないか?
ぞくり、と血の気が引いたのがわかった。
音が途切れ、ピッチの合わない不協和音。
「ごめ……もっかい、いい?」
仮にも私は女で。
いくら恋心が互いに無いと言っても、雪音ちゃんみたいに可愛い子が、納得するだろうか?
まだ雪音ちゃんの彼氏に昇格したわけじゃないけど、そうなるように願っている私を、疎ましく思うんじゃないだろうか?
切れた息を整え、顔を上げれば、遼の、気がかりそうな優しい黒い目。
思わず、目を逸らした。
最初のコメントを投稿しよう!