833人が本棚に入れています
本棚に追加
次に意識が浮上したのは、さっきのライブで、私が夢中になって指先をみつめたギタリストに、じゃあ行こうか、と、抱え起こされた時だった。
ああ、やっぱり指長い。
きれい。
打ち上げ会場の居酒屋から、いざなわれるままに、ホテルへ入る。
…ホテル?
私は、行く、と言ったっけ?
手を引かれて、おとなしく歩いていたのだから、また承諾しちゃったのかも知れない。
「どの部屋がいい?」
ああ、あんなに素敵にギターを弾いていたのに。
あんなにカッコ良かったのに。
ただの…
男に、なってしまうんだ?
私は、一番黒の多い部屋を、指差した。
せめて、このギタリストの長くて綺麗な指先が目に入らないと、いい。
甘く、優しく、してくれると、いい。
最初のコメントを投稿しよう!