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「いらっしゃいませ~こんにちは~。」
「いらっしゃいませ!こんにちは!!」
店内には年期の入った声に続いて、無駄にハキハキとした声が鳴り響いた。
「それではレジ打ち練習を始めましょうか。」
「はい!よろしくお願いします、野地さん!!」
私は元気よく挨拶すると、野地さんはビックリしたような顔をしたあと、ふにゃりと笑った。
「残念だけど、私は空いてる方のレジを担当してなくちゃいけないから、佐藤さんにレジ打ちを教えるのは私じゃないの。」
ごめんね、そういうと首を傾け次に私の後ろを差した。
「レジ打ちを教えるのは、オーナーよ。」
その声とほぼ同時に後ろを振り向くと、そこには中肉中背の眼鏡をかけた白髪混じりのおじさんがいた。
年齢は50代後半と言ったところだろうか。
「こんにちは、初めまして!
佐藤ゆきです。本日からよろしくお願いします!」
「ああ。」
オーナーらしき人物はぶっきらぼうに、低く短くそう言った。
感じ悪い人だなぁ…。
ぶっちゃけこんな明らかに堅物そうな、愛想の悪いオッサンなんかに教わりたくないなぁ。
そんな事を思っているとき
「あぁ~。こんなちんちくりんに教えるなんてなぁ。あんた、明らかに鈍臭そうだし。」
オーナーは意地の悪い顔をして、次にニヤリと野地さんを見た。
「野地さんみたいに、綺麗で仕事の出来るコだったら教え甲斐もあるってもんを…」
そして、またチラリと私を見ては嫌味たっぷりのため息をつく。
野地さんは困ったように苦笑いを浮かべると、オーナーには分からないように、私に「頑張って」と唇だけを動かした。
私、このお店で頑張っていける気がしないよ、お母さん……。
私の心の声は、小さなため息とともに空気に溶けた。
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