AM2:00

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連れてこられたのは、一軒の落ち着いた雰囲気のBARだった。 会社近くにこんなBARがあるとは知らなかった私は、勧められるままにカウンターに座りながらぼんやりと店内を見回す。 バーテンダーと何やら話していた彼がそっと私の横に座った。 とたん、ふわりと薫る香水?と微かなタバコの匂い。 落ち着かない気持ちになり、思わずうつむく。 「何を飲まれますか?」 その声にはっと顔をあげる。目の前にはバーテンダー。 「ええと・・・。」 こういうBARには縁がない私は少し困って、知っている限りのカクテル名を思い出す。どれもいつも行く居酒屋にある様なものばっかり。 カシスオレンジ カルーアミルク ファジーネーブル どれも安っぽい気がする・・・。どうしよう。 と、突然。 「甘いのが好き?」 と横から声をかけられた。 タイミングの良い声にほっとする。 「はい、好きです。甘いの」 「うん。じゃあ、彼女に何かフルーティーなカクテルを作ってあげてくれるかい。私にはいつものを。」 「畏まりました」 バーテンダーは一礼すると、戻っていく。 その後ろ姿を見送った後、彼は私に体を向けた。 「改めまして、私は高藤(たかとう)卓(すぐる)と言います。今日は急に声をかけて申し訳なかったね。」 「いいえ!私は井上(いのうえ)美夏(みか)と申します。」 「美夏さんか、よろしくね。」 そういうと高藤さんはゆったりと笑う。笑うと漆黒の目元にしわがより、とても優しそうに見える。 その笑顔を見て少し緊張が解けた。
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