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「でも」
「ん?」
「高藤さんのご家族は・・・、あと夜も遅いし、仕事、それに私なんて子供だし」
思ったことを全部単語で並べた私に、高藤さんがふっと吹き出し、笑いだす。くすくす笑う高藤さんが一通り笑い終えるまで、私は途方に暮れた様に高藤さんを見つめる。
やっと落ち着いた高藤さんは優しい目で私を見た。
「一つずつな。」
「・・・はい。」
「まず、私に家族はいない。だから美夏が気を遣う相手はいない。」
こくりと私は頷く。それを見てふわりと笑うと、高藤さんは続ける。
「夜遅いのは確かに問題だね。明日仕事があるのもお互い様だ。でもそこは何とかなるだろう?」
「・・・。」
「あと、ええと、君が子供って話か。むしろそれは私の方が気になるけどなあ。こんなおっさんの私に付き合ってもらっていいのかって。」
「そんなことないです!!」
思わず、大きな声を出してしまい、気まずくうつむく。
「・・・高藤さんは大人で、素敵な男性だと思います。」
「ありがとう。」
高藤さんがまた私の頭を撫でた。
そして車の方を振り向くと小さくうなずく。
何をやっているんだろう?
と思った瞬間、車がすっと動き、私達の前で止まった。
そして運転席から寡黙そうな男性がさっと下り、うやうやしく後部席のドアを開けてくれた。
あまりのことに声を出せない私に、高藤さんは闇夜と同じ目で笑いかける。
「どうぞ、お姫様。」
「!!」
その言葉も、態度も、明らかに人生経験を踏んできた男性という感じで。
私は操り人形の様に、車に乗り込んだ。
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