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「でも、多分今日はタクシーを拾うのは難しいんじゃないかな」
「なぜ?」
「今日は花火大会だから」
「!!」
朝の駅。「大花火大会(本日夜20時~)」というポスターが頭の中でフラッシュバックする。
そうか、今日は花火大会。たくさんの人が電車やタクシーで移動するはず。そうなればタクシーだって稼ぎ時だ、こんな都内に空車で走っているタクシーに出会える確率は・・・低い。
思わず頭を抱えた私を見て、彼が苦笑する。
「送っていきたい所ですが、初対面の人に送られるのは嫌なんですよね?」
「・・・・。」
何も返事ができない私をじっと彼は見つめる。
そして何か思いついた、ゆっくり口を開く。
「では、飲みに行きますか。」
「え!?」
彼の申し出にあまりに驚くと、彼がさらに苦笑を深める。
「飲んで時間をつぶせば、その内、タクシーも拾えるだろう?」
「店だったら他人の目もあるし、貴女も安全を確保できるしね。」
ゆったりと笑う彼を見て
頭でいろいろと考えて
どうやらその手しかないことを悟る。
「・・・お願いします。」
苦しげに発した言葉を聞いて、彼が楽しげにうなずいた。
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