3人が本棚に入れています
本棚に追加
雑貨屋に訪れると、やはりと言うべきかそこにいたのは僕のエリザさん、オッホン。エリザさんではなくゴッツさんだった。
筋肉隆々でまるで彫刻のようなゴッツさんはカウンターの奥で腕組みをしていた。
恐る恐るといった感じでその様子を見ていると、そんな視線に気付いたのか此方に向かってくると俺の姿を見るや否や、
「おう!ユウじゃねえか。久しいな、おい。おう、今エリザの奴呼んできてやるから待ってろや」
何だ何だ!?フラグか?いつの間にか気付かない内にフラグを立てていたのか?だとするとある一定の回数の来店?それとも……。
っていうかそもそもゴッツさんてこんな喋り方だったのか!
「何?お父さん。大変大変って……あれ?ユウさん。ウフフ、さっきぶりですね」
こ、これは夢か?エリザさんがお店の決まり文句以外の言葉で話し掛けてくれている!?
「あ、あはは。実はさっき迷宮でモンスターにやられちゃって……」
死に戻りしちゃったんですよーえへへ。と続けようとしたのだが、
「え!迷宮!?あんな危ない所に行ってたんですか!?」
エリザさんの驚いた顔……新鮮。
これだけで五年間Brave Hearts Onlineをやっていて良かったと思える程だ。
……やべぇ泣きそう。
「あ、うん……まぁ……」
照れ隠しに頭を掻いていると、もう片方の手を何者かに奪われる。
「本当に……無事で良かった…」
手はエリザさんの両手の中。
本当に心配そうな表情で見てくる。
凄いなぁNPCってこんな表情も出来るんだ。
「ユウ、お前俺の娘にこんだけ心配させたんだ。今日はいつもより多めに買っていけよ?」
そこは抜け目無ぇな。ゴッツさん。
そんなゴッツさんの横でエリザさんがもう、お父さん!等とまるで本物の人間みたいなやり取りだなー。とそれを見てまた和む。
「それじゃあ、ユウさん。私は買い出しがあるのでこれで」
「うん、またね」
愛しのエリザさんが行ってしまう。けど、また明日会えるさ。
明日はいつもと変わらない決まった台詞しか喋らないエリザさんになっているだろうけど……。
エリザさんの姿が見えなくなるまで見送っていると、不意にゴッツさんに肩を叩かれた。熊に叩かれたかと思った。
振り向くと、そこには意味有り気に笑うゴッツさんの髭もじゃ顔。初めて見るその顔に不思議と腹は立たなかった。
「さぁて、今日は何を買う?」
商売上手。
最初のコメントを投稿しよう!