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「委員長ー、新刊の搬入終わりましたー」
グレーに黒で縁取られた学ランという高等部の制服と色違いの中等部の制服を纏った生徒が部屋に入ってきて、幸村に報告する。
幸「ああ、ありがとう。君はもう帰っていいですよ。あとは、高等部の方でやっておきますから」
幸村はそう言うと、中等部の委員にむかって微笑む。
その微笑みは、ふわりと心が温かくなるような、けれどもどこか儚い微笑みだった。
「は、はいぃ。ではお先に失礼しますぅうお疲れ様でしたぁああ////」
中等部の委員は顔を真っ赤にして出て行ってしまった。
そう、この儚い微笑みこそ藤堂幸村の代名詞だった。
この微笑みを向けられた者は、温かいような切ないようなもどかしい気持ちになるそうだ。
幸「あれ?行っちゃいました。ご褒美にチョコレートをあげようと思ったんですけど…」
?「毎回毎回、あんさんもようやるなあ。まあ、ええわ。
はいこれ、4月の利用率の集計や」
夕日が差し込むこの時間帯、委員室には幸村少年の他には、もう1人しか残っていなかった。
明るい茶色の髪にオレンジ色のメッシュを入れた、茶色の目の少年だ。
上着の前はすべて開けられ中に赤いTシャツを着た少年は少しガラが悪そうだが、笑えばその少年が気のいい人物だとわかる。
幸「詩歌先輩、相変わらず仕事早いですね。ありがとうございます。チョコいりますか?」
詩「ははは、おおきに。有り難く貰っときますわ」
オレンジメッシュの少年、高等部2年、図書副委員長の渡詩歌(ワタリシイカ)は苦笑いしながら幸村からチョコを受け取る。
詩「そうや。ユッキー知っとるか?」
幸「何をですか?」
詩「明日、あんさんのクラスに転校生来るいう話やで」
幸「本当ですか!?」
幸村はいつもの儚げな雰囲気からは想像も出来ない速さで詩歌に詰め寄った。
詩「ホンマやで。
ていうか近い近い////」
幸「あ、すみません」
詰め寄りすぎて、鼻と鼻がくっつきそうな勢いだった。
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