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カナリアはもう一度ばらを見つめました。
ばらは、静かに、真っ赤に、燃えるように朝露にぬれて咲いています。
カナリアの心の中で、何かが少しずつ動き始めました。
それは泉のようにわき上がる「歌いたい」という想いでした。
カナリアは、もう一度ばらを見つめて、深呼吸をして、そして目を閉じました。
ばらの甘い香りが体に満ちてきました。
心の中にばらの美しい燃えるような姿が、くっきりと浮かびました。
そして、ふうっと、息を吐き出したとたんに、それは、美しい調べとなって、流れ出したのです。
それは、カナリアが、生まれて初めて、自分の心のままに自分の想いをこめて、歌った歌でした。
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