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頬を撫でる冷たい夜風の感触に、香澄は目を醒ました。喉が灼けるように熱く、身体が痺れるように怠い。 五年前の両親が殺された時の夢を見たのは久しぶりだった。 サムライになるまでは毎晩のように見ていた夢。 阿修羅の入れ墨は、バクフに仇をなす賊国≪ミノ乃国≫のサムライの証だ。両親を殺した男がミノ乃国にいる、それを知ったのは事件のすぐに後だった。 --必ず復讐してやる。 香澄はその一心でバクフのサムライになったのだ。 香澄は右手の拳を握りしめる。ジトっとした汗が、心にまで染み付くようだった。 原因は≪あの鬼≫のせいだろう。  
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