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  しばらく沈黙が続いた後、群から一匹のシマカムシが少年の前に飛んできた。小型の個体で、若干腹が膨れているように見える。 そのシマカムシは細長い肢体を少年の左手肩に絡めて止まり、遠慮がちにその管を少年の腕に突き刺した。 見る見る内にそのオオシマカムシの腹が赤く膨れていき、それに比例して少年の腕も腫れていく。 少年は一瞬顔をしかめたが、すぐに笑顔に戻る。そして何事もないように片手でチャバネムシの触覚を握っていた。 「こいつ、もうすぐ出産するから血が必要らしいんだ。でも獲物が見付からなくて、もう何日も血を吸えていないんだとさ。このままだと腹の中の子供が死んじまうから少しだけでもいいから血を分けて欲しいんだって」 確かに、少年の血を吸う前からこのオオシマカムシの腹は膨れていたような気がする。しかし、そもそも蟲の言っていることが解るなんてありえない。 「な、何言ってんの……?」 香澄は眉間に皺を寄せ、刀を抜こうと思った。 しかし香澄の心配をよそに、その個体はある程度腹を膨らませると少年の腕から管を抜き、宙に飛んだ。 「もういいのか?」 少年が問い掛けに答えるように、そのオオシマカムシはくるりと旋回してから、群の中に戻って行った。  
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