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香澄が唖然と見守る中、オシマカムシの群は再び高度を上げ、木々の上に飛び去っていく。 夜蟲が獲物を前にして帰っていくなど、香澄には到底信じられなかった。だが、少年が言った通りの出来事が起こった。 辺りは再び静けさを取り戻していた。香澄はオオシマカムシが去って行った夜空を見上げつぶやく。 「信じられない……」 夜蟲の群は跡形もなく姿を消し、少年は何事もなかったかのように手綱を引いている。しかし、その腕は確かに赤く腫れ上がっていた。 夜蟲はいつの世も人間を襲い、例外なく人間の敵であった。少なくとも香澄はそう認識している。 けれど少年は蟲を友達と言い、進んで腕を差し出した。 蟲を操り、蟲と会話し、そして共存している。 不思議な少年だと香澄は思った。  
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