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香澄は手に持っていた地図をくしゃくしゃに丸め森の中に放り投げると、深い溜息をついた。 「こんなところに村なんて無いじゃない」 ふもとの村で、「この辺りに地図には載っていない村がある」と聞いたのが三日前。村人曰くその村にどうやら銘刀を持っている者がいるのだという。 香澄は直ぐに地図を書いてもらい山に登ってみたのだが――山道は何年も人が歩いていないようで荒れ果てており、三日掛けてようやく地図の示す場所に辿り着いたものの、銘刀どころか村さえ見当たらなかった。 そうこうしている内に辺りは暗くなり始め、遠くの山から≪夜蟲≫の鳴声が聞こえてくる。 香澄は顔をしかめて両手で身体を摩った。 「また野宿か……やだな」  
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