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香澄は返す言葉も見付からず、地面に尻をついたまま口をパクパクとさせ目の前の光景を見詰めていた。
無駄に立派な六本の足でカサカサと地面を踏み進むチャバネムシ。
香澄の目の前までくるとチャバネムシは足を止め、まるで香澄の心を見透かすように漆黒の眼で香澄の顔をジッと見詰めた。
長い触角がゆらゆらと揺れている。香澄の背筋が凍りつく。
その上に乗っている少年は、香澄を見下ろし首を傾げた。
「何だお前、女なのに刀なんて持ってんのか」
少年と共に、チャバネ蟲が香澄に顔を寄せる。
チャバネムシの触角が香澄の頬をやんわりと撫でる。ザラっとした嫌な感触がした。
「きゃゃゃ!」
そして香澄は悲鳴と共に意識を失った。
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