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人間には相性があるらしいが、芦屋という男と俺は馬が合わない。
「俺も、先生がこんな深夜に押しかけてくるような人を友達にしたなんて信じられません」
きっぱりと嫌味を言ってやる。
「ちっ、可愛げがねぇ。……あー、俊哉も遅いし」
退屈だなぁと、芦屋さんはスマホを眺めながら不満そうにぼやいてる。
「せっかく客からうまいワインもらったつーのに」
無視。
「八木君もそう思うだろ?」
無視無視。
「おーい?無視かい」
聞こえてないだけです。
「君に会いたかったんだよな、俺」
「は?」
なんで俺に?
最後まで無視するつもりだったはずが、あきらか独り言にしてはインパクトのある内容に反応してしまった。
「あぁ。アイツが囲い込んだお気に入りが見たくって」
囲い込んだ・お気に入り、どれもいい意味じゃないことくらい分かる。
だって俺は……。
「何が言いたいんですか?」
「八木君って、俊哉のどこを好きになったんだ?年上の男に固執する必要なんか、なかっただろ?」
―――その質問に答える義務はない。
でも、その眼が俺を見て憎んで、怒っているのは分かる。
なんと説明を受けているのかは知らないが、先生が、生徒…男と一緒に住んでいるのだ。
「芦屋さんは、俺が……」
嫌いなんだな…
その先を言いかけた時、玄関の扉が乱暴に開かれる音がした。
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