プロローグ

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…… … (つまんねー…) 「(ゆい)さん。どうかしたんすか?溜息なんか吐いて」 「別に…」 時刻は20時。久々に所属している不良チームの集まりに顔を出したってのに野郎共がナンパやゲーセンだのと騒ぎながら散っていくのを眺めているだけだ。 刺激も興奮もなく、ただ時間だけが無駄に過ぎていく。 「どーせ"期待ハズレだった"とか思ってるんでしょう?」 「分かってたなら聞くなよ」 「うーん、俺らもゲーセンかカラオケでも行きますか?もしリクエストあれば近くの店探しますよ」 「はぁ…」 「え、なんで溜息?」 お前のいらない世話焼きのせいだ。 俺なんかのご機嫌伺いをするから、周りの連中からは"(八木唯)の忠犬"なんて不名誉なあだ名で呼ばれているんだよ。 「……なんだっていいだろ」 コイツの存在は鬱陶しいし、便利だとも思ったことがない。おまけに馴れ馴れしく下の名前で呼んでくるのも気に入らない。 それでも無理に突き放したりしないのは、一人くらい後輩(という名のパシリ)をつけとけ、と総長からの命令で仕方なくだ。 「お前さ、用事がなきゃ帰れよ。こんな時間までうろうろしてると親が心配すんだろ?」 素行が悪い他のメンバーはさておき、普段から無駄に元気も愛想もいいコイツは以前、家族仲の良さについて一方的に語っていた。 性格的にも友達が多そうだし、わざわざ不良とつるむ必要なんてないはず…って、 「なにニヤニヤしてんだよ…」 「へへ。唯さんってそうゆうとこ気にしてくれるんですね」 は?と眉を顰めると不機嫌になったと勘違いしたのか慌てたように両手を出して、揶揄ったわけではないと言う。 「ちゃんと分かってますよ?なんだかんだかわいい~後輩が心配なんですよね?」 「誰が可愛い後輩だよ」 口うるさいチビの間違いだろ? ついでに煩いからキャンキャンと隣で騒ぐな。と軽く頭をしばいてやった。 「い、痛っ!?なにも叩かなくてもいいじゃないですか!?それにいま、小さくちびって言いましたよね!?」 「?そんな強く殴ってない」 大袈裟なリアクションに首を傾げる。 それにお前がチビなのは事実だ、否定のしようがないだろ? 「や、ノリなんですが…」 「海苔?」 「分かんないならいいですよ…。うちの親、今日は二人とも夜勤なんです。唯さんちはどうなんですか?」 そんなに誰かと話がしたいなら他を当たってくれ。 相手せず黙ると「ねーねー」と(やかま)しい。 「俺んとこは夜が本業」 「そしたら、今日は一緒すね」 『夜更かしなんか久しぶりです!』 なんて楽しそうに笑ってるが 総長の命令で不良共が集まるーーー。 この集会を、ただの夜更かしと思える平和的思考が羨ましい。脳内花畑かよ 「あーそうかよ、よかったな」 そんな感情のない返事をした。
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