2章前:(あなたといる)

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「おー。新野が綺麗にしてる……わけないから、八木君のおかげか」 感心だとか言いながら芦屋さんは、さっきまで俺がいたソファーに腰を下ろす。 溜息が出そうになるのをこらえて、手渡されたワインを冷蔵に入れた。 「あの、お茶でも…」 「おかまいなく。でも出来るならビールがいいな」 「……」 なんとも図々しい人だな。 「お、この芸人のコント面白いよなぁ。八木君も突っ立ってないで一緒にTVでも観ようぜ?」 「いいえ、結構です」 ビールを渡す俺の顔を見て、芦屋さんは苦笑していた。 「なんか敵意むき出しって感じだな?ちゃんと前もって家にくる連絡はしといたんだが」 「…本当ですか?」 「あぁ。残念なのは送別会があるってのを俺が忘れてただけだ」 それは約束じゃないし、断られといて来るとか迷惑行為なのでは? 呆れる俺をよそに芦屋さんはカシュッとビールを開けると美味そうに飲んでいる。 「はぁー…俊哉とは高校からの腐れ縁だ。あ、信じてねぇな?」 いつまでも疑いの目を向け続ける俺に気付いてか、勝手にツッコミを入れてくる。 「こんな嘘ついてどうすんだよ。俺は俊哉ん家に飲みに来た、それだけだ」 理由はよくわからないが、ヘラヘラした芦屋の態度が気に障る。 隣に座るなんてごめんだ。ソファーではなく食事をとるための椅子を引いて腰かけた。 「一方的にそう思ってるだけじゃないんですか?」 「お、中々毒舌だな?黙ってりゃ大人しく見えるのに」 変哲もない普通の顔立ち。髪を黒に戻した今、初対面の人からしてみるとそう見えるのだろう。 けど、生憎と振る舞う愛想は持ち合わせちゃいない。 「ほっといてください」 「アイツにも、そんな態度なのか?」 「関係ありません」 「ふーん?俊哉って、もっと素直そうなのがタイプだった気がするんだけどなぁ?」 知るかよそんなこと。
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