2章前:(あなたといる)

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新野side _______________________ 先生と、いたい…? 「っすっげぇ、殺し文句…」 可愛すぎる。 一体どこで俺のツボを覚えてくるのか…。 「安心したように眠っちゃって…」 俺はいい人間でも、ましてや完璧ではない。 ボロを出さないよう丁寧なキャラを取り繕ってきたが、芦屋のせいでぶち壊しだ。 「でも、これで少しやり易くなる、か」 そもそも素なんていつまでも隠せるものじゃない。 自ら足を突っ込んできたのだから、必要ならば芦屋にも協力を仰ぐか。 手の力を緩めると唯の手が寝間着をぎゅっと握ってきた。 「…・、…」 「あー、ごめんごめん」 長い前髪を搔き分け、その額に口づけを落とす。 そうだ。この子の悲鳴を聞いた日から俺に余裕なんてものはない。 (俺は君がしてきたことに、無駄なんて言わない…言えるはずがない) 悪いのは唯君(子供)を虐げ搾取してきた大人達だ。 何度そう聞かせても唯は耳を閉ざし、自らを責め続ける。 この子は何も悪くないのに… じりじりと身を焦がす怒りの炎。 【異常だ】 芦屋。すまないが、そんなものはとっくに理解している。 でもダメだ。 『俊哉君が名前をつけくれると嬉しいな』 『お兄ちゃんに、なってあげてね』 正人さんの叶えられなかった願いは、ここまで歪んでいた。 なんの因果か、運命?それとも神の悪戯か。 いや、なんだっていい。 俺は2の奇跡を手に入れたのだから。 「俺も、唯君といたいよ」 「……、う、ん」 まさかの返事に瞳孔が開くが、同時にどうでもいい考えが消え失せる。 「芦屋さんと俺、どっちが大事だっけ?」 そんなの比べるまでもない。 生まれる前から、君だけだ。 ================= 次からしばらく回想シーンになります。
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