2105人が本棚に入れています
本棚に追加
あら? 何かが切れたようですね。
「いいだろう。それならさっさと転生してもらおうじゃないか」
スッ・・・・・・。
なるほど。足下に突然大きな穴が生まれましたね。そしてこの先が異世界であると。
真下に人が数名通れるほどの穴なので普通に落ちます。
ここで可愛らしい声を上げることがあったならば、ヒロインのような立場にもなれるでしょうか? どうでもよいことですね。
現在進行形で落ちている最中、私は静かに口を開きます。
「ひどく突然、というツッコミはいりませんよね。ですが最後に一言だけ」
――ありがとうございました――
声に出ていたかはわかりません。声に出ていたとしても届いたかどうかはわかりません。言ったか言わなかったか、ちょうど意識を失ってしまったがために自分でもわかりません。
ですが届いたことを、伝わったことを願います。
◇
場所は移り、ここはとある王国のとある貴族の屋敷。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
たくさんのメイドや執事、そして服装の違う男が一人と5歳くらいの男の子が一人。
ある部屋の前に集まっているが一同無言で、落ち着かない様子で歩き回る者、祈るように固く手を組んで握り締める者もいる。
そんな重い重い空気が漂う中、沈黙を破る音が発せられたのは部屋の中からだった。
――オギャア、オギャア!
赤ん坊の声。
皆、その声に弾かれたように意識を扉へと向ける。
バタン! と大きな音を立てながら内側より扉が開けられた。開けたのはメイド服の所々に赤い染みを作ったメイドで、息は荒かったがしっかりと前を見据えて言った。
「お生まれになりました! 双子の女の子です!」
――双子――
この場にいる人間全てを驚ろかせるには十分すぎる要因である。
しかし一人、立派な服を着た男はメイドが報告した直後には部屋の中に飛び込んで行った。
最初のコメントを投稿しよう!